木になるはなし

フジ(藤)

フジ(藤)

学名:Wisteria floribunda

社名にあることから、伊藤忠グループには「藤」にちなんだ名前が多く、私たちにはとくに身近に感じられる花木です。

フジは日本原産で、本州、四国、九州の低山、平地に自生していましたが、古くから愛され、園芸品種も多く開発されて、いまや世界中で栽培されています。一 般にフジと呼ばれるのは、紫の花ぶさが長く垂れ下がる優雅な花姿のノダフジで、園芸種では白色や淡紅色のものも見られます。

やはり日本原産で、花が短い別種のヤマフジもよく知られていますが、ノダフジのつるが右巻きなのに対し、ヤマフジは左巻きなので容易に区別できます。

花を鑑賞するほか、丈夫なつるは古代から縄の代用としたり、かごなどの材料としても用いられています。種子は薬用になり、緩下剤としても利用されてきました。

フジ(藤)
美しい花姿は古くから人々の心をとらえ、わが国の代表的古典にはフジが多く登場しています。『万葉集』には、フジを詠んだ歌が27首あります。

しかしこの花を最も愛好したのは平安時代で、平安貴族たちの「藤見の宴」も盛んに行われました。平城京の飛香舎の庭には、フジが植えられ、藤壺と呼ばれました。その主ともいえる中宮藤原彰子に仕えた紫式部は『源氏物語』で、光源氏の理想の女性として藤壺を登場させます。

花の姿は家紋にも多く使われ、「下がり藤の丸」「上がり藤の丸」「八ッ藤」「藤巴」など、その種類は数十におよびます。また、花が下垂する形が稲穂を連想させ、豊作を予兆させるため、神聖な木ともされています。

優雅なフジの花を見ながら、古典の世界に思いを馳せてみませんか。万葉集から一首。

藤波の 花は盛りになりにけり 平城の京を思ほすや君
大伴四綱

データ

マメ科つる性落葉樹で日当たりのよい肥沃な湿潤地が適し、日陰では日当たりのよいところまで枝を伸ばして花を咲かせる。

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